ヤクモアパートメント

sj02ssF8G2439
sj02ssF8G2439

都内に建つ4住戸の賃貸集合住宅の計画である。敷地は桜並木のある緑豊かな緑道に面した住宅街にあり、緊急車両が頻繁に行き交う消防署や、産業廃棄物置場にも隣接している。対峙する環境の性格がそれぞれ異なることから、周囲の建物に多く見られる様な、桜並木に対してのみ開かれた佇まいに懸念を抱いた。隣接するネガティブな要素を否定せず、ポジティブな要素と等価に扱い、周囲の環境に対して均等に距離を保ちながら、小さな家が建ち並ぶ風景を思い描いた。そこで、4つの住戸を個別に分割し、スライドさせながら外殻ヴォリュームの操作を試みる。

与条件として求められる最大ヴォリューム用意した上で、それを十字に切断し、対角にある2つのヴォリュームを、僅かに接する面を残しスライドさせ隙間を作りだした。この隙間は各住戸の専用庭となり、通風、採光を確保すると共に、隣接住戸、対峙する周辺環境に対して適度な距離を持った緩衝帯となる。庭に面する隣棟壁を空に向かって傾斜させる事で、対角にある住戸との間にもスリットが生まれ、北側の庭、緑道まで光が差し込み、広がりと奥行感を増幅させている。隣接住戸の庭に面する開口は、傾斜した壁の窓からは空を、足元に設けられた窓は地面を映し出し、視線が交錯しない、住人同士の緩やかな関係性を導き出している。

設計監理
白子秀隆建築設計事務所
所在地
東京都目黒区
用途
長屋
敷地面積
151.18㎡
建築面積
87.30㎡
延床面積
150.75㎡
階数
地上2階
構造
木造
竣工
2011.03
構造設計
OUVI(横尾真)
写真
上田宏
施工
佐藤建工
受賞
住まいの環境デザインアワード2012:入賞
第32回INAXデザインコンテスト:入賞